上海の生活 中国で働く人々 中国の風習

中国人はなぜ「爆買い」をするのか?

投稿日:1月 15, 2018 更新日:

ひと頃中国から日本にやってきた人たちの爆買いが話題になりました。特に秋葉原の電気街では炊飯器やら加湿器やら持ちきれないほどの買い物をした中国人の映像がテレビに映し出されたものです。それを見た私は「あゝ、彼らも大変なんだな」とつい思ってしまうのでした。そう思ってしまう私の中国での体験をお話ししたいと思います。

磁気ネックレスがブレイク

私が上海市郊外の嘉定区に駐在していた時のことです。中国の若い人の間に日本のピップエレキバンの磁気ネックレスが流行した時期がありました。会社の制服の胸元からカラフルなネックレスが覗いている人が急に増えたような気がしていましたが、それが急激に広まったようです。日本に帰る社員に日本でそのピップエレキバンの磁気ネックレスを買って来て貰えるよう頼む人も多いと聞きました。中国国内でも中国製の模倣品が売られていましたが、やはり、日本のピップエレキバン製でなければいけないようでした。

私は総務の李課長に、ピップエキバン製も中国でも売っているのではないかと聞きました。李課長が言うには、売っていることは売っているが輸入品であるので関税やマージンやらが乗って割高だというのです。それはそうだろうが、もともと数百円の安いものなのだから、割高になったとしてもたかが知れているだろうと正直思いました。そして、自分にはそんな依頼が来ないのは、やはり私には頼みずらいのだろうと思い、もしあれば快く時期受けてやろうとさえ思ったものでした。

そしてついにその依頼が来ました。日本語が堪能な製造部の葛(ge)係長が席にやって来て、来週日本に帰ると聞いていますが、磁気ネックレスを買って来ていただきたいのですが如何でしょうかといいますので、内心やっと来たかと思いながらも、軽く「ああいいよ」と答えました。すると彼は満面に笑みを浮かべて、他にも欲しがっている者がいて、自分が数量をまとめるので一緒にお願いできますかと重ねて聞いてきました。私は懐が広いところを見せようとこれもいちになく承諾をしました。

磁気ネックレスのバイヤー

葛係長は、数人の名前とそれぞれが希望する磁気ネックレスの色とサイズを書いたメモを持って来ました。その時はじめて磁気ネックレスは一つではなく、色とサイズ(首回り)の組合わせが何通りもあることを知りました。日本での価格はインターネットで調べがついているようで代金も添えられていました。私はメモを見ながら頷くしかありませんでした。

その直後に今度は別の係長がどこで聞きつけたのか、自分も是非お願いしたいと同じような複数の名があるメモを持って来ました。私は多少面倒な気持ちがしてきましたが今更のことなので表面上だけは快く引き受けることにしました。これを見ていた李課長が、こんな感じで次から次と来るのではお仕事に支障があるでしょうから、私が依頼をまとめましょうかと言ってくれましたので、それでは頼むということになりました。

最終的に李課長がまとめた表には色とサイズの組合わせで9種類の合計32個のリクエストがありました。中には一人で複数の希望を出しているものもあり、親戚にでも配る気なのかなと考えてしまいました。かくして私はピップエレキバンのバイヤーと化したのでありました。その時はまだ、そのリストを日本のドラッグストアーで店員に見せて揃えてもらえばいいという程度にしか考えていませんでした。

気が付けば「爆買い」

日本に帰った次の日、忘れないうちに面倒なことは済ましてしまおうと一番近いドラッグストアーに車を走らせました。その店ですべてが済むと思った自分の考えの甘さを思い知らされました。その店には買おうとした9種類のうち3種類しかなく、店員に聞いても在庫がないというのです。急いで次のドラッグストアーに走りましたがそこでは残りの6種類のうち2種類がありましたが数量が確保でない物もありました。

もう1軒回っても全ては揃わないので、私は車の中で他に知っているドラッグストアーと売っていそうな店を必死で考えていました。その時、それまで買い物に付き合ってくれていた家族が「日本に何をしに帰って来たの?」とあきれた顔で聞いてきました。その言葉で私は目が覚めました。「そうだ私は一体何をやっているのだろう」。傍から見れば私は磁気ネックレスの爆買いをしていたのです。

結局何とか1種類だけを除いて揃えることはできましたが、揃わなかったものについてはゴメンナサイしてお金を返すしかないと腹をくくりました。これ以上貴重な帰国の時間を無駄にすることは耐え難いと思いました。ところが、上海に戻る羽田空港の免税店でこの磁気ネックレスが大量にぶら下がっており、欠品していた色とサイズのものもあるではありませんか、うれしいやらがっくりするやらで複雑な思いがしました。

さて、依頼されたものを約束のものを李課長に手渡すときに、今度帰国するときはもう引き受けないので注文を受けないようにと付け加えました。彼はいつもの人なつこい笑顔を見せて「分かりました」とだけ答えました。

強力「わかもと」1000錠の瓶が3本

その次の帰国の時には磁気ネックレスの注文はありませんでしたが、生産管理課の沈(chen)課長が買って来てほしいものがあると頼み込んできました。彼女は会社の中ではかなりの年長の部類に入り40代でしたが、日本での生活が長く、いろいろな職業を転々として苦労をしたようです。そのため日本語が堪能で、特に専門知識が豊かというわけでもないのに生産管理の課長にまで昇進していました。幹部職員でもあり、ひとりからの依頼だから受けようかなと思いましたが、その彼女が買って来てほしいものとは、胃腸薬の強力「わかもと」1000錠入り瓶を何と3本でした。日本にいる間に使用しているうちに常用薬となり、中国に帰ってからも飲み続けているとのことで、日本に行く機会があるたびに3本買ってくるのだが、丁度なくなってきたのでお願いしたいというわけでした。

私は少し考えた末にこう彼女に言いました。自分も日本に帰るにあたってはいろいろと持って来たいものがあるが全部は無理なので予め決めてある。ついては3本は勘弁し貰って1本にしてくれないかと。日本生活の長かった彼女は私の主旨をすぐに理解して、依頼そのものを撤回してくれました。

次に運転手の楊(yang)さんに買い物を頼まれてしまいました。彼には毎日の出退勤の送り迎えをしてもらったり、上海市街の医者に通う時などいつも車を運転してもらっていて中国語の先生でもありましたのでできれば頼みを聞いてあげたいと考えました。しかし、彼の依頼品とはニコンの一眼レフデジタルカメラでした。私は、そんな高価なものを買って来て、希望していたものと少し仕様が違うなど言われても責任が取れないので勘弁してほしいと正直に言いました。彼は何度も頷き、分かってくれて依頼を撤回してくれました。

日本では上司に土産を頼まない

私はこれらの経験を踏まえ、総務の李課長に話をしました。日本では、例えば上司が休暇で実家に帰ると聞いた部下が、そこの名産物で自分が好きなものがあるからついでに買って来てくださいとお金を渡そうとすることなどは絶対に起こりえないと。中国では当たり前のことが日本ではありえないこともあるということを理解して、帰国者に買い物を頼むのは控えるようにみんなに言ってほしいと頼みました。彼は神妙に私の話を聞いていましたが、やがていつもの人なつこい笑顔になり「分かりました」と言ってくれました。彼は日本人に対しては控えめでしたが、同じ中国人には滅法強くてみんなを黙らせる迫力がありました。面倒なことを取り仕切ってくれる信頼できる部下です。どのように言ってくれたのかはわかりませんが以後帰国の時に買い物を頼まれることは一切なくなりました。

日本に帰国して、秋葉原で爆買いをする中国人をテレビで見るたびに、中国でのことを思い出し、あの人たちもいろんな人に頼まれたのだろうが大変だなあと、つい余計なことを思ってしまいます。街頭インタビューで彼らも「自分の買い物は少しで、ほとんどは親戚と友人たちから頼まれたものです」などとはいいませんので、中国の庶民が最近裕福になって高価な電気製品を買いまくっているよう思われがちです。しかし、彼らを爆買いに走らせているのは、自分では日本に行きたくても行けないので代わりにお金を出して欲しいものを買って来て貰うと考えている大勢の人たちであることを忘れてはいけません。

スポンサーリンク



スポンサーリンク




スポンサーリンク




-上海の生活, 中国で働く人々, 中国の風習

執筆者:

関連記事

中国でのタクシーの乗り方

中国の上海でのタクシーの乗り方は日本と違うところがありますので、注意した方がいいと思います。 最初に上海のタクシーに乗って戸惑うのはドアが自動で開かないことです。つい日本での習慣で止まったタクシーのド …

上海の賃貸マンションの価格は? 【中国での部屋の探し方】

実際の上海の賃貸マンションの価格ははどうなっているのか、これから上海に出向になる人には気になることですが、インターネットで簡単に調べることができます。 それは房天下というサイトです。 中国の主要都市の …

監視カメラが映し出した中国工場での様々な出来事

私が通勤した上海工場では毎日いろいろなことが起きます。日本の工場では考えられないようなことが次から次と起こり、油断ができません。そのために工場内には多くの監視カメラが設置されているのですが、その監視カ …

上海のスーパーでのショッピングあれこれ

中国で買い物をするときに日本人が一番困惑するのは、万引き防止のためにカバン類を中に持ち込めないことです。日本の観光客が中国に行って買い物をするようなところは一般の庶民があまり行かないところですので、そ …

中国人社員の面子と思いがけない涙

李係長のこと 総務の李課長は私が上海工場に赴任した時はまだ係長でした。年齢は30を少し過ぎたころで背が高くて顔も引き締まって精悍な感じがしました。日本語は問題なく話すことができ、日本人には愛想がいいで …