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中国映画「非誠勿擾」のヒットと反日感情

投稿日:1月 8, 2018 更新日:

上海に駐在していたときは、年に2,3回は日本に帰っていましたが、上海に戻る際には羽田空港の免税店で会社の中国人スタッフ用にお土産を買うのが常でした。身近で仕事をしている中国人スタッフは30人程度いますので、お土産には小さくて嵩(かさ)張らないのがいいと思い、適当なものを探すとクッキー「白い恋人」の箱詰めがあり大きさも値段も手ごろなので、買ってお土産したことがあります。これが結構受けがよいのでその後のお土産の定番になったのですが、何故、羽田の国際線の免税店で北海道のお菓子が山のように積み上げられて売られているのか不思議には思っていました。

何でも無料で見られた中国の動画サイト

当時中国では世界各国の映画が見放題の動画チャンネルがいくつもあり、日本の映画やTVドラマも結構新しいものが見られましたの。そのほかに中国語の勉強も兼ねて大陸物の中国映画もよく見ていましたが、その中でたまたま目に留まった映画に「非誠勿擾」という映画がありました。何気なく見ているうちに段々と引き込まれて行き、そのうちに日本の北海道が舞台になって話が進みだしましたので一気に最後まで見てしまいました。
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中国が舞台のシーンは長い会話が多くて今一つ意味がわかりませんが、北海道が舞台のシーンでは会話も少なく、北海道の自然の美しさや、教会での懺悔やヤクザの葬式そして居酒屋でのシーンなど、エピソードが盛りだくさんでおまけに日本語も混ざっているので中国語が分からなくとも結構笑えます。

中国の映画には必ずと言っていいほど普通語(標準語)の字幕がありますので、その映画をもう一度見ながら、今度は聞き取れないセリフのところで画像を止めて辞書を引きながら時間をかけて、話の筋を追っていきました。そうしているうちに段々とストーリーが見えてきました。どうやら主人公の中年男が、奇妙な発明で大金をつかみ、結婚相手をインターネットで公募した話のようです。

応募して来た女性たちとの絡みが前半の中国でのシーンでお互いに探りを入れるような長い会話が続くわけです。途中で知り合った航空会社の客室乗務員と二人で行った旅行先の北海道が後半の舞台です。北海道の広大で美しい風景をバックに話が進むロードムービーになります。客室乗務員の彼女は不倫で悩んでいて、ある日岬から北海の荒海に飛び込み自殺を図ります。

映画に出てくる網走の灯台と中国観光客向けの看板。

 

北海道はあこがれの聖地に

話の筋は分かりましたが題名の「非誠勿擾」の意味が皆目分かりません。四文字熟語かと思い辞書を引いてみましたが、そんな熟語は出てきません。一つづつの漢字の意味は分かりますが、並べてどういう意味で使われているのかはいくら調べてもついに分かりませんでした。題名は、作者があまたある言葉の中からこれはというものを選んで、思いを込めるものですから、それが分からないということは何か重大なことが抜け落ちているようなきがして落ち着きません。

あるとき、ついに映画好きで金城武のファンである人事課の呂さんに聞いてみました。「非誠勿擾」という映画を見たけれども知っていますかと。彼女は呆れた顔をして、その映画はそれまでの中国の興行収益の記録を破った映画で、中国で知らない人はいないほど有名な映画ですと言いました。そしてこの映画の中の北海道の美しさに魅了された観客に北海道の大フィーバーを引き起こし、北海道はそれ以来中国人にとって聖地のような憧れの場所になったことなどを教えてくれました。これで羽田空港に、北海道のお土産であるはずの「白い恋人」が何故山積みされているかが理解できました。日本に来た中国人の観光客は、北海道には行っていなくとも北海道のお土産を持って帰ることが一種のステータスになっているのです。

「非誠勿擾」の意味するところは?

映画が有名であることは分かりましたが「非誠勿擾」の意味は?と聞きますと呂さんは少し困ったように考えて、日本語に置き換える言葉は思い浮かびませんが、意味としては「誠実でないならば、邪魔をしないで」というようなことになるかもしれませんと説明してくれました。中国語の「擾rao」は「かく乱する」とか「邪魔をする」という意味の動詞で、通常の会話にもよく出てきます。相手が何かしているときに声をかけて中断させたときなどに、用件が終わってあとで「打擾了」(お邪魔しました)といった風に頻繁に使います。

主人公がインターネットで結婚相手を募集している画面の最後に書いている文句が「非誠勿擾」で、それをそのまま題名にしたところはユニークです。その決まり文句を日本語で書くとしたら、さしづめ「冷やかしお断り」とでも書くところでしょうか。

 

北海道を訪れる中国人

この映画は中国では2009年の正月映画として公開されたました。そしてその年で一番観客を動員した映画となり、その影響で日本への北海道への観光客もうなぎ上りに増え始めました。ところが、2010年の9月に尖閣諸島近海で漁船衝突事件が起こり、中国での反日感情の高まります。

日本では連日大きく報道されていることは、上海にいてインターネットを通じて知っていました。しかし実際に上海市の郊外に駐在している私には、中国各地で起こっているという日本の百貨店襲撃や日本車焼き討ちなどの報道から想像するような反日感情を肌で感じることは全くありませんでした。

私自身が北海道出身ということもあり、中国の人たちが北海道に憧れて大勢訪れているという話は自分のことのようにうれしく思ったのですが、尖閣諸島問題に端を発した反日感情の高まりが中国からの北海道観光にどの程度影響したのかがとても気になるところでした。

そこで、北海道庁のホームページで中国人観光客の来道数の推移を見てみたのですが、その影響はあまりないように思えました。その数値をエクセルで折れ線グラフ化してみたのが下のグラフで、2016年度最近までの外国人観光客のうち北海道を訪れた人たちの推移を表しています。赤い太線が中国からの観光客で、韓国、台湾、その他と比較が可能です。横軸は西暦の年度、縦軸は来道者数(万人)です。

反日デモの影響はないが・・・

 

このグラフを見ますと、映画が公開された年の2008年度から中国からの来道者が増え続け、2010年度にいったんピークを迎えます。2011年度はそこから20%強減少していますが、この傾向は台湾を除く他の外国人訪日者数も同様の傾向であることから、2011年度の中間期である9月に起こった尖閣諸島問題の影響ではなく、2011年3月に起きた東日本大震災と福島原発事故の影響と見ることができます。そして1年おいて2013年度から再び中国からの来道者は増加に転じ以後はうなぎ上りに増加します。

東日本大震災がなければ、2011年度のピークがそのまま伸び続けたであろうことは想像に難くありません。報道された尖閣諸島問題による反日感情の高まりと思われるものは全国的、普遍的なものではなく、少なくとも北海道に憧れる人には影響していなかったと言っていいでしょう。あの過激な反日デモは中国政府が国民の政府への不満を逸らす或いはガス抜きために意図的に誘導しているもので、エスカレートしてその矛先が中国政府に向かないように制御しているとの見方がありますが、あながち穿(うが)った見方とも言えないとことがこの事実からも窺(うかが)えます。

中国での映画「非誠勿擾」のヒットを受け、日本でも2012年の2月に公開されましたがい翻でどの程度の評判であったかは中国にいたので分かりませんが、邦題の「狙った恋の落とし方」には、ちょっと引いてしまいます。内容と題が合っていない気がします。「冷やかしはお断り」という原題にそった題名の方がよかったと思うのですが、いかがでしょうか。

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