上海の生活 中国での買い物

上海の金陵東路で二胡を買う

投稿日:1月 7, 2018 更新日:

中国の古楽器二胡の音色は好きで、中国に住んでいるからには一度は実際に弾いてみたいと思っていました。

最初に実際に二胡を見たのは会社の仲間と上海郊外の周荘であそんだときです。周荘は引き込んだ水路とそれにかかる石橋、そして明・清時代の旧民家が立ち並ぶ水郷古鎮で、上海の名所のひとつとして日本人も多く訪れます。その旧民家が喫茶店や土産物屋になって並んでいるところは日本の福島県大内宿によく似ています。その店の1軒に二胡が売られていました。といっても部屋の奥の壁に如何にも古そうな二胡が3,4本ぶら下げているだけに売り子も見当たりませんでした。

値札が壁に貼ってあって2000元前後(3万円程度)と結構な値段です。そんな高値のものを売っているのに店番がいないなんて中国ではありえないことです。多分中国人には価値がなくて持ち去る者などいなくて、高いものはいいものだと思い込む日本人観光客目当てなのでしょう。私もその日本人のひとりで、持ち合わせがあれば買ってしまうところでした。

結局そのお土産屋通りで買った物は50元のローレックスの腕時計でした。もちろん紛(まが)い物です。私はその時計を腕にはめ、日本からの出張者にこれ見よがしにみせて、これはローレックスだぞと自慢した後で種明かしをして喜ぶという、子供っぽい遊びをしばらくはしていました。しかし、そのうち半年もしないうちにそのローレックスも頻繁に触る竜頭辺りから錆はじめ8カ月ぐらいで錆が前週に回り、以前していたSEIKOと交代せざるを得なくなり、楽しみもなくなりました。
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次に二胡に出会ったのは、上海市の人気の観光スポットである南京東路の商店街です。人民広場から始まるこの路は1km先で外灘に出るのでいつも内外の観光客でごった返しており、私も日本からの出張者などにたいする観光案内で何度も歩いています。この南京東路の外灘終点に近いところに古楽器屋があり二胡が店頭に飾って会って気になっていたのですが、あるとき思い切って入ってみました。この店の名前は「上海民族楽器一厰」と言って自社工場も持つ老舗らしいのですが、入ってみると店内はさほど広くはなく、展示品もまばらにしかありません。どうも日本人観光客から二胡の注文を取り付け輸出許可などで必要な書類を作成して申請する代行サービスが売りのお店のようでした。二胡は保護動物のニシキヘビの皮を胴体に貼っていますので輸出規制対象となっており、お土産として簡単に国外に持ち出せないのです。

私は、経理の張さんに二胡を買いたいのだが、観光人相手ではなく、上海の人たちが普通に買いに行く古楽器店を知らないかと尋ねました。彼女は、人民広場近くの金陵東路が楽器店街になっており、あらゆる楽器が集まっているのでそこがいいと教えてくれました。そして次に休日に案内してくれるというのでその好意に甘えることにしました。

楽器通りの金陵東路

次の休日に私と張さんは上海市の交通の要である地下鉄人民広場駅に降り立ちました。人民広場に接して南北に走る幹線道路の西蔵南路を起点として東に延びて外で行き止まる通りは多くありますが、それぞれの通りには個性があって大変興味深いです。北の端に位置するのは最も観光客で賑わう南京東路(南京歩行路)ですが南の端の方に位置するのが金陵東路です。この金陵東路は西蔵南路が起点ではなく、上海音楽庁前を走る太い幹線道路ですが西蔵南路と交差した後に細い商店街となっています。上海音楽庁は昔は南京大戯院と呼ばれていた劇場で、今は上海最大のコンサート劇場になっています。

上海音楽庁と関係があるのかは定かではありませんが、細い方の金陵東路は多くの楽器店が軒を並べている楽器店街になっています。西洋音楽の楽器を扱う店と中国の民族音楽の楽を扱う店とが入り乱れていますが、どれも小さなお店で、中に入ると所狭しと楽器が並んでいます。外で楽器をぶら下げているだけのお店もありました。

二胡を売っている何軒かのお店を観て回りましたが、安いもので300元から、高いものは3,000元ほどしました。付き合ってくれた張さんも二胡に関する知識がなくてあまり差が分かりませんので、適当なお店でとりあえず初心者向けのケース付きで700元(1万円程度)のものを買い求めました。

二胡を持とうとして驚いたこと

勇んでタクシーに乗って嘉定区のマンションに持ち帰り、ケースの中を開けて弓を取り出して持とうとして、手が止まりました。弓が弦にからまっていて取れないのです。どうやったら弓が取れるのだろうかとしばらく二胡を見つめました。そしてやっとある考えに到達しました。弓を弦から外すには、まず弦を本体から外さなくてはならない、そんなことをしなくてはならないようにわざわざ仕組んであるはずがない。だから、弓が弦に絡まっているのではなく、もともと弓が2本の弦の間を通った状態で固定されているものだと。普通の弦楽器は弓の片側だけで弦をこすりますが、二胡は両面でこする楽器であることを初めて知りました。

二胡は、弦楽器は弓と弦が離れているのが当たり前と思い込んでいる盲点を突いた、異色の楽器だったのです。というか、そんなことも知らずに購入するほうもするほうだと自戒の念にとらわれましたが。しかし、映画やビデオで二胡を奏でる美しい女性を見ているときに、その優雅さに注意が行っているにしても、引いている弓が実は弦から外れない構造になっていることに気づく人がどれだけいるでしょうか。気づく必要もないのですが・・・。

音が出たけで満足

実は日本にいるときに、弦楽器に憧れ、一度手で触れて音を出してみたい、本当にあんな音が出るのだろうか自分で確認したい衝動に駆られ、チェロを買ってしまったことがありました。実際に聞きなれたチェロの音を自らの手でさせた時の感動は忘れませんが、同時にそれで満足してしまったので、その後2,3度手にして音階を鳴らしてみただけで、これまた無理して購入して数回叩いただけのヤマハの電子ドラムセットと一緒にお蔵入りにしてしまいました。チェロを上手に弾けるようになろうなどと大それたことはもともと考えてはいませんでした。どうも私には次々と楽器を買っては音が出ただけで満足するという習癖があるようです。

もともと、どこか優しく物悲しげな二胡の音色は好きで、二胡のCDなども持っていましたし、二胡が奏でる「蘇州夜曲」はお気に入りの曲で繰り返しく聞いたものです。実は二胡を買い求める気になったのには、弾いてみたいというほかにもうひとつ動機になったことがあります。

二胡を買ったもうひとつの動機

それまで、中国語会話を学ぶために何人もの中国人の教師について学習もしましたし、パソコンやテレビ番組で勉強していましたが、今一つ中国語が身についていないという実感がありました。それは生きた会話の経験が不足していることによるものだろうと考えました。日本語のできない人たちの中で必要に迫られて中国語の単語をひねり出す訓練が必要だと考えたのです。会社で日本語のできるスタッフを無視して、自分の語学習得のために仕事を利用することは避けなければなりません。仕事は本来効率が最優先されるべきだかです。

そこで考えたのが地元のサークルに入ることです。そこに日本語のできる人がいる訳がありませんから、必然と中国語会話のいい勉強になるはずです。最初は太極拳のサークルを考えてネットで探してみましたがなかなか見つかりません。朝、公園に行けば何人かが集まって太極拳を一緒にしている人たちが必ずいますので、特にサークルなど作って集っていないのかもしれません。

そこで思いついたのが二胡です。二胡であれば中国人でも習いたいと考えている人もいるでしょうし、サークルや教室もきっとあるはずだと考えました。ネットで探しても見つかりませんでしたが、中国でパソコンを使っている人は限定されるはずです。別の方法で探せばみつかると思い、それまでは二胡を購入して少しは弾けるようになっておこうと考えたの動機のひとつです。

素朴な楽器の音色

結局のところ、購入した二胡もチェロと同じ運命をたどり、ほこりをかぶることになりました。地元のサークルに入るというのも考えだけで終わり、実践することなくやがて帰国命令が出てしまいました。その二胡は買い物に付き合ってくれた張さんに貰ってもらいました。張さんは餞別代りに中国の庶民的な笛をプレゼントとしてくれました。それは瓢箪に単に横穴の開いた竹を突き刺しただけのような笛で、原始的で素朴な構造をしていました。彼女はその笛で中国の曲を一曲吹いて見せてくれましたが、やはり見た目と同じで飾り気のない素朴な音色がしました。

張さんに貰った「ひょうたん笛」

 

その笛は日本に持って帰り、今も書斎の壁にイーベイでペルーから購入したパンフルートと並んでぶら下がっています。この笛を見るたびに、張さんと二胡を思い出します。

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