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上海で出会った韓国と北朝鮮【上海での接待事情】

投稿日:12月 17, 2017 更新日:

私の上海の工場では携帯電話の部品も製造していましたので、部品を納めている世界有数の携帯電話端末機メーカーの人たちが打ち合わせやラインの視察のために工場に来ることがよくありました。1社は世界に冠するAp***社(以下A社)です。もう1社は韓国の巨大企業S電子です。フィンランドのノキアが凋落してからはこの2社が当時の世界の携帯端末を2分していると言ってもいいぐらいでした。

この2社の外注企業に対する態度は全く対照的でした。A社はまさに王者の威厳があるように感じました。創業者ジョブス氏のポリシーと教育が浸透しているのでしょう、まじめで紳士的でした。仕事を挟んだ昼食は、近くの日本料理店から日本弁当を取りよせるのですが、それを美味しいと言いながら器用に箸を使いながら食べてくれる以外は一切の饗応を受けつけません。夕方仕事を切り上げて帰るときに夕食を一緒に食べに行きましょうと誘うのですが全く相手にされません。

規律正しい王者の貫禄

来社するA社の社員の多くが顔見知りのアメリカ人でニューヨークからやってくるのですが、私の会社の海外営業部の英語の達者な営業マンが同伴してきますので、言葉に困ることはありません。私も日本にいた時はヘタな英語で外国人スタッフや海外の顧客と多少の会話はしましたが、上海では完璧に日本語しか話さず通訳してもらっています。

上海に来てから数カ月して海外の顧客が打ち合わせに来社した時のことです。普通に英語で挨拶をしようとして、全く英語の単語が出てこない自分に気づいて唖然としました。それまで私は中国語ばかりを勉強して、会話も極力通訳を使わずに下手でもいいからまずは中国語で話してみようと努力をしていました。そのために、「私は誰それです」と自己紹介しようとしたところ中国語の「我是~」しか頭に浮かんでこないのでした。英語の「私」に相当する単語「I」がいくら考えても出てこないのです。これには正直まいりました。

どうやら、頭の中には思考回路とは別に言語回路なるものがあって、私の言語回路には今のところ「母国語」と「母国語以外」の二つしかスィッチしかなく、「母国語以外」は英語から中国語に切り替わっていたようでした。英語で会話をするには言語回路を「母国語」「英語」「中国語」の3スイッチ回路を形成したうえで「英語」に切り替える必要があるようです。そのためにはそれなりの訓練が必要である事がその時はじめて分かりました。それ以来上海では無理に英語を話さそうとせずに通訳に任せることにしたのです。
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A社の社員はアメリカから来るだけではありません。上海にあるA社の支社から来る場合もありその時は中国人の社員が来ます。シンガポール支社から中国系の社員が来るときもあります。その場合は打ち合わせは中国語で行い日本語の堪能な中国人スタッフが通訳をしていくれます。中国人だから接待は受けるだろうと考えていると、これがアメリカ人と全く同じで頑として接待は受けませんでした。それ以来私はA社に畏敬の念を抱くようになりました。

A社の社員はアメリカから来るだけではありません。上海にあるA社の支社から来る場合もありその時は中国人の社員が来ます。シンガポール支社から中国系の社員が来るときもあります。その場合は打ち合わせは中国語で行い日本語の堪能な中国人スタッフが通訳をしていくれます。中国人だから接待は受けるだろうと考えていると、これがアメリカ人と全く同じで頑として接待は受けませんでした。それ以来私はA社に畏敬の念を感じています。

韓国企業の流儀

一方の韓国のS電子は大分様子が違っていました。S電子の30代と思われる若い技術者が来たときのことです。同伴して一緒に来たのは代理店の朝鮮族の中国人女性で、彼の朝鮮語を中国語に訳し、それを会社の中国人スタッフが日本語に訳すという手間のかかる打ち合わせでありました。中国人のお客さんにはお茶を出しますが、外国人のお客さんには珈琲を出すことになっています。中国人は普通の珈琲は飲みません。中国人が喫茶店などで飲む「コーヒー」は歯が解けるほど砂糖が入っていて、ミルクもたっぷり入っているのでまるでミルクココアです。外国のお客さんにはコーヒーメーカーで入れたドリップコーヒーをお出しします。

ところが、出された珈琲を見たS電子の技術者は「コーヒーは嫌いだ。コカ・コーラを出してくれ」と言ったのです。社内にはコカ・コーラはありません。1500人からの社員がいる工場ですが飲み物の自動販売機はありません。中国では街角に自動販売機は一切ありません。車で機械ごと持ち去られるから初めから置かないのです。止むを得ず会社の運転手に言って街中までコカ・コーラを買いに走らせました。

会議が終わった時に彼はまたこう言いました「今日の会議は疲れた、按摩に連れて行ってくれ」。上海市街の高級按摩店まで車で乗せていき、按摩をしている間待つこと小一時間、そのあとに高級レストランで食事をして一区切りがついたところで代理店の女性にはお帰り頂きました。これからが本格的な夜の接待になるのですが、「上海の夜」を満喫すべく彼の要求は限りを知りません。彼と彼への「持ち帰りみやげ」をホテルに届けた時は既に午前2時を回っていました。それから1時間かけて帰ったた時にはへとへとに疲れてしましました。

その次に来たS電子の技術者は20代後半になったばかりというような感じのまじめでおとなしいそうな青年でした。自分から何かを要求するということはありません。S電子にもこういう人がいるのだと少し安心しました。会議が終わって泊まっている上海市街のホテルまで送って近くのレストランでごちそうしたあと、「こんなところもありますが興味ありますか?」と日本で言うところのキャバクラであるカラオケバーを一応社交辞令で勧めたところ、あっさりと「行く」というではありませんか。仕方なく連れて行きましたが、あとは前の社員と同じ夜のフルコースになってしまいました。あんなまじめなそうな青年が・・と思いましたが、以前に聞いた話を思い出しました。S電子社内は厳しい競争世界で有名ですが、様々な難しい研修をこなしていかなければ出世できません。その研修のひとつに接待のさせ方と受け方の研修があるというのです。その時はまさかそんなことはあるまいと思いましたが、この時ばかりはやはりあるのだなと思ったものです。

 

上海市内の北朝鮮料理店

韓国企業からのお客さんの食事の接待で何度か利用したことがあるのが上海市内にある北朝鮮料理店です。徐匯区の建国賓館3階にある玉流館という店です。

 

北朝鮮料理店「玉流館」

 

実際に北朝鮮が外貨を獲得するために国営で開いている店で、北朝鮮から派遣されてきた料理人が作る料理と若い女性の生バンドの演奏が売り物でした。韓国のお客さんから別段リクエストがあるわけではありませんが、こういうところがあるけれどどうですかと聞くと皆さん関心を持ってそこに行こうということになります。

 

若い女性のバンドは4人編成で民族服のチョゴリを着て民族楽器の演奏と踊りの後、ギター、キーボード、ドラムのバンドで民謡からロック調の音楽まで30分ほどの楽しげに演奏したあと、中国人の店員に混ざって客席まで料理を運ぶサービスをしてくれます。話しかけるとにこやかに応対しますが、横の席に座ったり、誘われても一緒にお酒を飲んだりということはしません。みんな上品な振る舞いで育ちの良さを感じさせました。一緒に行った朝鮮族の代理店の人の話ですと、彼女たちは大学で音楽を専攻している学生たちとのことでした。北朝鮮で子供の時から楽器を習うことができて大学に行けるの一握りの富裕層であり、父親が権力の中枢にいることをことを意味してるようです。ですから、上海のきらびやかな世界に触れても脱北しようなどとは考えないお嬢さん達であるわけなので国も安心して外貨稼ぎに外国に出せることになるわけです。

玉流館でのバンド演奏

 

北朝鮮の料理は淡白な味付けですが八角味の中国料理に辟易していた私にはとてもおいしく感じられました。日本で食べ慣れている韓国料理とも違っていました。あとで、連れて行った韓国の人に感想を尋ねたところ、「遠い昔の田舎の料理を食べたような気がして懐かしさを感じた」というものでした。70年も前に一緒だった国がふたつに割れ、一つはそのままで歩みが止まり、今一つは世界の流れの中で変遷を重ねてきた。その違いが料理に表れているのではないか、そんな気がしました。

食事が終わって帰るときに韓国からの客人が北朝鮮の女性たちとの記念撮影を希望し、彼女たちも受け入れので店の入り口でみんなで撮ることになりました。シャッターを切る前に前の方でかがんだ男性がこの時とばかりに左横にいた北朝鮮の女性に腕を回して肩に手を置いたところが目に入りました。彼女は前を向いたままもの柔らかに左手を添えて彼の手を肩から外しました。それはまるでヤンチャな子供をたしなめる母親のような慈しみと気品のある手つきでありました。

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