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中国の不動産バブルはどうなるのか【日本の土地バブルとの違いは?】

投稿日:12月 10, 2017 更新日:

上海に住んでいた2008年ごろの土地は価格が急騰しており、このままでは日本のように土地バブルが弾けるのは必至と思われました。しかしそれから10年近くたった今でもバブルが弾けたとは聞いていません。中国の土地価格は一体どうなっているのでしょうか。

下のグラフは中国の2001年から2016年までの土地の価格の推移を示しています。

これを見ますと、商業用の土地が一番高く、次に住宅用の土地が続きます。いずれも不動産抑制策がとられた2011年以外は価格が上昇し続けていることがわかります。工業用の土地は極端に価格が低くほとんど変化していないことが分かります。海外の企業の工場誘致を推進するために国家が政策的に工業用用地を低く抑えているものと思えます。

次のグラフは土地価格の上昇率の推移を表したものです。

土地の価格が急騰した年の翌年は上昇率が下落していることが分かります。2002年に当時の朱鎔基首相が不動産部門への投資過熱に対する過熱を懸念する表明しています。中央政府レベルでの警戒感を受けて、実際の土地売買の管理をしている地方政府が抑制をしているものと考えられます。
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2012年以降は価格は上昇し続けてはいますが、上昇率は鈍化する傾向にあるように思えます。私が上海市に住んでいた2008年当時はまさに土地バブルの真っ最中であったわけですが、現在は比較的落ち着いた推移をしているといえます。日本でのバブル崩壊のような危機が迫っているような状況ではないようです。

そもそも、日本のバブルはなぜ起こって、なぜ弾けてその後「失われた20年」と呼ばれるほどの低成長時代を迎えることになってしまったのでしょうか。

日本の土地バブルのプロセス

日本の土地バブルの崩壊は次のようはプロセスを経ていると一般的に言われています。

①1980年代前半、日本は当時円安の影響を受けて大幅な貿易黒字になる。

②アメリカでは日本の安くて品質の良い製品に太刀打ちできずに国内産業が悪化。

③ アメリカは円高に誘導する政策を盛り込んだプラザ合意を締結。

④その結果 円高倒産をする企業が続発し、一時的な不況がおこる。

⑤日銀が銀行への貸出金利を引き下げる不況対策実施。

⑥企業が銀行からお金を借りやすくなったため、その結果、企業の経営は回復し、長期景気拡大をもたらす。

⑦低金利のままのために、 企業がお金を借りて株や土地に投資するようになる。

⑧マスコミが「土地神話」をもとに土地購買意欲を煽っため、不動産を欲しがる人や企業が増え、不動産価格が上昇。 買った不動産を担保に借金して、さらに不動産を購入といったことが繰り返えされ、土地バブルが一気に膨れ上がる。

⑨ バブルを抑えるために日銀は金融引き締め策を相次いで敢行。

⑩銀行が土地の売買に関するお金の融資を規制する「不動産融資総量規制」施行。

⑪これ施策が急激な景気後退をもたらし、バブルが崩壊。

不動産、株の価格が実体経済とかけ離れていることを懸念した日銀が行った金融引き締め策と総量規制とが効果を発揮しすぎて、一気にバブルが弾けたわけです。もっと緩やかな対策であればバブルもソフトランディングできたかもしれませんが、歴史的事実に「たられば」は意味のないことです。

中国の不動産バブルのプロセス

さて、中国の不動産バブルはどういうプロセスで起きているのでしょうか。

①1998年に中国政府は住宅制度の改革を実施。これまでの公務員や国営企業の従業員などを対象とする住宅制度は従来の実物配分、即ち年功や地位に対応して住宅そのものを配分する制度から、住宅手当などの支給による貨幣配分へと大きく変化。不動産市場がマーケットとして成立。

②同時に導入された内需拡大政策が不動産市場の活性化に大きなインパクトを与え、住宅販売価格は上昇した。

③地方政府が不動産市場に対して世論の形成、優遇政策の導入、需要の調整といった施策を積極的に行い、不動産価格が急騰した。

このように中国の場合は、国や上海市政府などの市政府が主体的に不動産バブルを形成してきたことが分かります。何故でしょうか。

中央と市政府が儲かる仕組み

そもそも中国では土地の私有は認められていません。中国だけが特異なのではありません。土地の私有が認められているのはアジアでは日本とタイだけだと言われます。中国においては都市部の土地は国の所有であり、都市以外の土地は集団の所有であると憲法に唄われています。ですから土地は売買できません。売買されているのは土地の「使用権」です。都市の土地の管理できるのは市政府です。市政府は開発企業と一緒に土地開発をしてマンションを建てて東京並みの価格で販売します。土地にかかる資本はタダですからそこから得られる利益は莫大であり、そのため市政府の財源は潤います。市の財源となるだけではなくその同額程度の利益が関係する役人や個人の懐に入ってしまうのです。

したがって市政府はキャンペーンや優遇政策を打ち出して庶民の住宅購買意欲を高めようとします。ある価格以上の住宅を買った者には、税金を減免するといった優遇策を取ったために、高価な住宅を既に持っている者が現在の家を売り払って更に高い住宅を購入して、税の優遇を受ける「富める者は更に富める」といった貧富の二極化が進んだという指摘もあります。

これらの市政府の不動産市場に関する政策を監視ているのが中央政府(共産党本部)です。中央政府には当然ながら利益の一部を吸い上げる仕組みがありますが、単に利益を享受するだけではなく、市政府の住宅所有活性化策が行き過ぎでバブルが膨らみすぎたのではないかと危機感が高まると制御を掛けます。また、中国政府は市場経済の後発の利点を活かし、政界中の経済バブルの歴史を研究しています。とりわけ、日本でのバブル形成と対策の失敗例は格好の勉強材料として詳しく研究されていると言います。

日本での土地バブルの発生と崩壊は、今買えば必ずもうかるとの群集心理とそれを煽ったマスコミと政府日銀の誤った対策で引き起りました。一方の中国における不動産バブルは政権側が主体的に関わっており、或る程度の制御が効いています。そのことから、たとえバブルが弾けたとしてもそれは小規模なものであって、対策も十分検討されていることから、実経済に及ぼす影響も最小限にとどめられるものと考えられます。

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