上海の生活

中国の若い女性はお風呂に入らない?

投稿日:2月 12, 2017 更新日:

上海に住んでいて困ったものの一つにお風呂があります。中国ではもともと日本のような首まで湯船に漬かるお風呂に入る習慣がないことをご存知でしょうか。

最初に入居したマンションは古い建物なのに部屋にお風呂がありました。もちろん洋式なのでトイレと同じ部屋にあります。お風呂というよりはバスともいうべきもので、浅く寝そべってお湯につかる感じですのでどうも日本人にはお風呂に入った気がしません。

このマンションが1年契約であったのを途中からかりたのですが、期限が切れたのを期に別のマンションをさがすことにしました。
会社の人がいくつか候補を挙げてくれて見て回ったのですが、いずれもシャワーだけか洋式バスかのいずれかでした。

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そのうちの一つにマンション自体が新しく、窓からの景色も素晴らしい9階の部屋があっので気持ちが動きましたが、洗面所とトイレとシャワールームが一緒になったタイプでお風呂がありません。

木製の風呂桶を無理やりシャワー室に

どうしたものかと逡巡していると、総務の社員と一緒に回ってくれていた運転手の朱さんが、シャワー室にお風呂を買って入れればいいと提案しました。そんな後付けのお風呂があるのかと聞いたところ、あるというので早速、みんなで売っているものをお店に見に行きました。

確かに、それは木製で座って入れるだけの深さを有していました。これならば、仕事が終わって帰った後に熱いお風呂に入ってゆっくりすることができます。値段も2000元まではしない手ごろなものです。気に入りました。

しかし、小ぶりとはいえ風呂は風呂なのでそれなりの大きさはあります。どう見てもシャワー室には入りそうもありません。

残念だがお風呂はあきらめることにして、やはりあの眺めのいいマンションにしようと思いました。ところが朱さんは絶対にシャワールーム入るというのです。入る、入らないと押し問答した後、そんなにいうのなら入れてみろということになりました。

彼は同僚の運転手を助っ人として何人か連れてきてその風呂をマンションに運び、とうとうシャワールームに押し込んでしまいました。それが下の写真です。

シャワー室に無理やり入れた風呂桶

彼は「どうだ」と言わんばかりに私を見ました。私は思わず「太棒了!(素晴らしい)」と叫んで満足げにうなずいて見せた。
結局そのマンションに住むことになったのだが、そのお風呂は私のお気に入りとなりました。風呂桶はお湯は焚けませんが給湯用の蛇口から入れるお湯で十分熱いお風呂になります。中に木製の椅子が付いて座って入る方式になっていたのが、それだと胸のあたりまでしかお湯に漬かれなくて不満でしたが、そのうち椅子が取り外しができることに気づいて外したところ、底に座って首までお湯に漬かれることができたのです。

中国式お風呂はお湯で行水

さて、冒頭で中国ではもともとお風呂がないと書きましたが、もちろん富裕な階級はそれなりおふろのようなものがありました。それは風呂というよりも巨大な木でできた盥(たらい)ともいうべきもので、唐や明などの時代劇映画などを見ていると、その大きな盥に下女たちが代わる代わる桶に汲んできたお湯入れているシーンを見たことがあるかと思います。その中に漬かってもお湯が首のあたりまで来ることはなく、下のお湯をすくって肩に掛けながら体を洗う感じです。

庶民はもっと小さな盥に最小限のお湯をいれ、布で濡らしながら体を拭く、いわゆる「湯あみ」をしているわけです。これは遠い昔に限った話ではなく、現在でもおなじことで、部屋にシャワーがなければ盥(たらい)で湯あみをするのです。

下の写真は「80年代的愛情」という1980年代の若者を描いた中国映画の一場面です。田舎の家ですが、居間に桶を運んで中央に置き、かまどで沸かしたお湯をその桶に何度か運び入れて用意した風呂に若者が入って体を洗っているシーンです。田舎とはいえシャワーのないところではこのように昔ながらの「風呂」が今も使われているものと思えます。

中国映画「80年代的愛情」から

 

農民工たちの住むところにシャワーはない

私の勤務する工場では1500人程度のいわゆる農民工と呼ばれる、地方からの出稼ぎの20歳前後の若者が働いている。圧倒的に女性が多いのですが、その多くが古い農家を共同で借りて住んでいます。

その石造りの農家の1部屋あたりに3~4人が一緒に住んでいます。もちろんシャワーなどありません。共同の水場から水を汲んできて、それを部屋で卓上のコンロでお湯を沸かし、タライに入れて湯あみをするのです。

男性従業員は会社などに設置されているシャワーをチャッカリ利用しているものも多くいたようですが、女性従業員の多くはこの湯あみをしているとのことでした。

私は話では理解したものの、目の前の彼女らが湯あみをしていることがどうにも信じられない気がしていました。彼女らは肌も髪も日本の若い女性に比べて遜色がないぐらいで。むしろ化粧をする習慣のない彼女らの方が総じて美しいのではないかとという気がしないでもありません。

私は経理の仕事を担当している特に美しい容姿の21歳の劉さんにあるとき思い切って質問をしたことがあります。「お風呂はどうしているのですか」と。妙齢の女性にこのような質問をすることは当然憚(はばか)れましたが、それよりも好奇心の方が勝ってしまいました。

彼女は地方から出て来て日本語と経理を勉強した後に私の会社に入ってきていますので、現場で組み立てラインに入って働いている多くの女性たちとは違って給料も比較的高いはずでしたが、彼女たちと同じシャワーなどありそうもない古い農家で共同生活をしていることをすでに知っていたからです。

あっけらかんとした彼女の答え

聞かれた彼女は、ためらうこともなく「湯あみ」をしていますと答えたました。「でも、今は冬だからそれでは寒くて風邪をひいてしまうではないですか」とさらに聞く私に彼女は、「お湯を入れたタライの周りをビニールのカーテンで囲うのです。そうすると湯気が逃げず結構あたたかいですよ」と笑って答えてくれました。それ以上詳しいことを若い女性に聞くのはさすがに憚’はばか)れましたのでやめるこにしました。

彼女は、大学を卒業しているので農民工ではありませんし、日本語ができる専門職ですので3000元ほどの月給をもらっていますが、その半分以上は実家の親に仕送りをしなければならなので、シャワーのあるマンションにはとても住めないのです。と言って悲壮感があるかというとそういうわけでもなく、全く屈託のない彼女たちではあります。多分、都会に出てくるまではそのようにしてきたのでしょうし、故郷の田舎では今でもシャワーのない生活をしているのだろうと考えられます。

中国映画「我们天上见」:室内の一角をカーテンで仕切り、中で湯あみをするシーン               (1976年頃の設定)

 

農民工が共同で住んでいる古い農家を一度見せてもらったことがありますが、共同の水場でおじさんがお湯を売っていました。バケツを持って行って、いくばくかのお金を渡すと蛇口をひねってお湯を入れてくれるのです。おじさんはボイラーに燃料をくべてお湯を沸かし、わずかばかりのお金を貰って生活しているのでした。彼女たちはそのお湯で自分たち部屋で湯あみをするのだといいます。(→訪問記

古い農家ではなく高層アパートの1室を複数(4~8人)で借りている場合は、シャワーがありますから、シャワーを順番で使っているようです。私の住んでいた嘉定区は郊外なのでまだ古い農家(住人は政策的に高層アパートに転居させられた)が残っていますが、上海の中心部ではほとんどなくなってきています、加えて物価も高く工場もないので、出稼ぎで出て来て若者にとっては住みにくい環境になっています。

中国にいて、中国のテレビドラマを見ていると、特に恋愛もののドラマは洒落たマンションに住んだり車を乗り回したりする若い男女が多く出てくるのですが、身近にいる同じ世代の若者を知っていますのでそのようなドラマを見るたびにどこの国のお話なのかなとつい思ってしまいます。

 

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